2019年7月号 主な内容

特集 在庫急増、価格も急落 古紙市況、視界不良に陥る 赤字でも輸出して凌ぐ
米中貿易戦争の余波を受け、古紙市況が狂い出した。急速に悪い方に。昨年10~12月には㎏30円近く、いや30円を少し出ていた中国向け段古紙価格は、今年6月に入ってガラガラと音を立てるように崩壊。7月上旬には5円とか6円という、これまで聞いたことがない数字になり、しかも量を取らなくなった。国内メーカーも段古紙の発注を減らしており、古紙問屋に30%カット、さらに8月からは10%カットを追加。といった措置も取られるようだ。ここにきては新聞古紙も同様の動きで問屋在庫は積み上がっている。先が見通せない状況だ。
日本が中国に輸出している古紙輸出量は2018年の場合で274万トンと、全体量378万トンの約72%を占める。なかでも段古紙の中国向けは157万トン。中国向けの約60%近くが段古紙ということになる。古紙再生促進センターの資料などから割り出すと、日本国内で回収された段古紙は1098万トンで、このうち199万トン、約18%が輸出に振り分けられている計算だ。
今年6月に入ったあたりから、中国向け段古紙の具合が急速にわるくなる。「中国向けの段古紙? 全然ダメ。ほとんど取ってくれない。値段もすごく下がっている」。と問屋筋。
7月に入ると状況はさらに悪化。「100トンとかその程度しか出ない。価格も5円とか6円ですよ。他の国も同じ程度の価格」という。少し前までは10円という声が聞かれたが、それも割り込み、一ケタの価格に突入した。変化がとてつもなく速い。
輸出状況の悪化に加えて、国内メーカーが段古紙の発注を減らしている。いわゆる納入カットだ。7月までに30%程度のカットが行われているようで、8月も10%のカットが行われるという。問屋のヤードには段古紙が山積みになっている。在庫が積み上がるよりは安くても輸出してしまった方がいい、というよりこれしか方法はないとの意識がとくに中堅どころの問屋の中にはあるようで、この7月上旬から中旬にかけて数社が5円で売り切った……

◆災害廃棄物 ‐令和元年度災対推進検討委 今後取り組むべき事項示す 情報共有アプリの整備も‐ 環境省は7月3日、「令和元年度災害廃棄物対策推進検討会」を開催した。令和元年度に取り組む事項として災害廃棄物処理の初動対応に関して、がれき・土砂一括撤去スキームなどについて防衛省・自衛隊や国交省との連携を標準化する方向で進める。また一般廃棄物処理に関する災害時初動対応に関する事項では、環境省とD.Waste-Netメンバーとの間での「情報共有アプリ」の手配を進めており、整備することで効果的・機動的な支援体制の構築を図る。さらに地域ブロック単位でのモデル事業や共同訓練を実施することなどを整理して示した。

◆自治体 ‐東京都環境審議会開催 プラ削減を気候変動対策に 「ゼロエミ東京」への取組み‐ 東京都は7月11日午後2時より都庁第2本庁舎において環境審議会を開催した。都は2050年にCO2実質ゼロとする「ゼロエミッション東京」の実現に向けた取り組みを展開する。ポイントのひとつは資源循環分野を気候変動対策に位置付けたこと。とりわけプラスチックについては、国のプラ資源循環戦略と併せて都としての新たな削減目標などを設定し取り組みを加速する。具体的には2030年度までにワンウェイプラスチックを削減し、家庭や大規模オフィスから排出される廃プラの焼却量を現在より4割削減する。「ゼロエミッション東京戦略」を本年12月に策定する予定。

◆サミット ‐G20大阪サミット終了 大阪ブルー・オーシャン採択 海洋プラ対策など首脳宣言‐ 本年6月28日~29日に大阪で開催された「G20大阪サミット(首脳国会議)」は、海洋プラスチックごみに関して2050年までに汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有し、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」を支持する「大阪首脳宣言」が採択され幕を閉じた。大阪サミットに先立ち、6月15~16日には軽井沢で「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開かれた。会合では原田環境大臣と世耕経産大臣が共同議長を務め、資源効率性・海洋プラスチックごみ対策など議論の内容をまとめたコミュニケを同意、採択された。

◆報告書 ‐平成30年度調査・報告 先進的環境ビジネスの取組み その動向と成功の秘訣‐ 環境省はこのほど、平成30年度「環境への取組みをエンジンとした経済成長へ向けて」を取りまとめた報告書を公表した。環境成長エンジン研究会(座長・八木裕之横浜国立大学教授、計8名)を設置し、IoTやAIを活用した環境ビジネスについて分析・検討を行ってきた。調査結果からは、とくに「水ビジネス」「長寿命化」「シェアリング」などの業種にITC(情報通信技術)やロボット技術が環境ビジネスに資することがわかったとしている。

◆時の話題‐ 一般廃棄物処理の新機軸15 システム導入によるメリット 事業系ごみ処理料金の一律化‐ 排出事業者に指定有料袋を購入してもらい、その袋でごみを出してもらい処理業者が収集する。袋の価格には処理業者の収集運搬費用と行政の焼却施設へ持ち込む処分料金が含まれている。袋は大きさごとにすべて同じ値段だから、どこの排出事業者がごみを出そうが同じ値段になる。――ごみ処理料金の単一化、ごみ処理一律料金だ。もうすぐこうしたプランが業者側から市町村に提出されようとしている。このシステムを導入した場合、行政・排出事業者・処理業者の三者にどのようなメリットがあるのだろうか。前回書いたことに付け足す。

◆ズームイン ‐事業系一般廃棄物業界41 苦境に立たされる管理会社 処理業者の確保に難航‐ 一廃処理業界の人手不足の深刻化が管理会社にも及んでいる。何回か書いたが、処理業者が「割の合わない仕事」から離れつつあるという現象が見られる。一言でいうと、コストの合わないお客の収集は「お断り」ということだ。もっと言うと「仕事を選ぶ」ようになってきたともいえるか。ドライバー不足が要因だ。こうした状況に管理会社も大きな影響を受けている。管理会社が抱えている物件から処理業者がどんどん離れていっているようなのだ。安い物件が切られている。とくに質の悪い管理会社は焦っているようで、様々な形で処理業者にアプローチしているのだが……。

◆記者説明会 ‐びん協・3R促進協 2019年度の事業計画 広報展開に確かな手応え‐ 日本ガラスびん協会とガラスびん3R促進協議会の両団体(会長:石塚久継石塚硝子社長)は7月17日、新宿区のガラス工業センターにおいて2019年度の事業計画説明会を行った。びん協の事業計画は、ガラスびんの持つ「素材価値」など3点をキーワードに事業を展開する。具体的な事業運営のひとつとしてこれまで蓄積された広報財産を積み上げ、定着化と拡大を目指す。今年6月に開催した「ガラスびんテージハウス」が盛会だったこともあり、広報活動に確かな手応えを感じたようだ。また3R促進協は、ガラスびんの3R対策を推し進める上で、自治体との更なる連携強化を図っていく。

◆ガラスびん ‐アンケートから窺える 思った以上にファンは多い やり方次第では復調も可能‐ 日本ガラスびん協会が今年6月に、渋谷区の築80年を越える古民家を借りて約2週間にわたり開催した「ガラスびんテージハウス」には、主催者の予想を上回る約1000人という来場者が訪れ、賑わいのうちに幕を閉じた。来場者のアンケートからはガラスびんに対する要望・提案も数多く寄せられ、思った以上にガラスびんのファンが多いことが窺える。長い間減少を続けているガラスびんだが、やり方次第ではガラスびんファンを増やし、減少に歯止めをかけ、少しずつ復調へ持って行くことも可能かもしれない。

◆視 点 ‐この業界は今後どうなる② 循環計画の中にヒントが 招来の方向性を考える上で‐ 日本の人口については政府がその時々にデータを出している。直近では総務省が7月10日に発表した住民基本台帳に基づく2019年1月1日時点の人口動態調査。それによると、日本人の人口は1億2477万6364人と前年調査から43万3239人減少した。減少は10年連続。減少幅は1968年の調査開始以来最大だった。人口は国の土台となる。人口減少は国の基礎が崩れていくことになる。物品・サービスを買う人が減るので生産・販売が落ちる。さらに日本は高齢化が著しいので、発生する廃棄物、資源物も減少していく。ごみ処理・リサイクル業者もこのままでは将来がおぼつかない。だが、業を展開していくヒントはある。

◆読者からの声 廃プラや雑品の中国禁輸により、これら輸出業者はどうなるかという問い合わせ。

◆廃プラ輸出 5月輸出は7.1万t、前年同月比2.7万t減

◆情報ファイル 学校給食の食品廃棄物、3R取組みモデル募集

◆リサイクルマーケット
鉄くず:下げ止まり感が見えはじめてきたか
古 紙:新聞も在庫積み上がる安くても輸出へ
故繊維:有り余る衣料品「旬」の時季も短い
容 器:微減続くガラスびん環境問題届かない
カレット:びん1人当たり年間適合物量5.5㎏
ニュース:家電リ法立ち入り検査の結果 ほか

6月号 主な内容

 

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