2019年12月号 主な内容

特集 台風19号による災害 全清連、被災地支援に出動 長野市・千曲市で13日間
観測史上最強クラスといわれた台風19号は、令和元年10月12日に猛烈な勢力を維持したまま伊豆半島に上陸し、関東や甲信、東北地区に記録的な大雨をもたらし、各地で堤防決壊、河川の氾濫を引き起こすなど甚大な被害をもたらした。(一社)全国清掃事業連合会(全清連・三井弘樹会長)は環境省の要請に基づき、災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.waste-Net)の初動対応メンバーとして、とくに被害が大きかった地域のひとつである長野市、千曲市の災害廃棄物処理支援活動に出動した。
全清連支援部隊の第1陣は、10月26日から11月1日までの1週間の支援作業日程だが、前日に環境省担当者や長野市の担当者、自衛隊、ボランティアなど関係者らと打ち合わせを行い、意見交換や情報収集などにつとめた。その結果、支援部隊としてはメインの「赤沼公園」(穂保地区)のほか点在する「勝手置き場」の災害ごみを、廃家電を含めて市指定の「仮置き場」である「長野市営更北体育館」と「飯綱公園東グラウンド」の2カ所に運搬することとした。第1陣の活動を引き継ぐ形で11月2日からは同7日までの予定で第2陣の支援活動部隊が入った。メンバー全員が重要連絡事項や各現場の作業進捗状況などの把握ができ、指定仮置き場や各排出現場などの位置を確認できるようスマートフォンの無料通信アプリで「グループLINE」を組み、「グーグルマップ」に地点登録して情報の共有化を図った。
赤沼公園の作業では、当初隊員たちは積み上がっている膨大な災害ごみの量を前に言葉を失い、また水分を含みカビが発生しかかっていた畳などに戸惑いもみられた。しかも赤沼公園は道幅が狭い住宅街のエリアあるため、住民やボランティアの搬入車両で渋滞が生じて作業が思うに任せない。災害ごみが山積みになった公園の中は、住民・ボランティア・自衛隊・全清連支援部隊が混在する状況だ。
日を経るにつれ支援部隊も現場になれてきた。種々工夫しつつ片付けのスピードも上がってきた。
支援部隊第1陣参加は1府7県の組合。延べ車両ダンプなど133台。ユンボなど重機41台。人員250名を投入。第2陣に参加したのは1府1市3県。延べ車両ダンプなど98台。ユンボなど重機45台。人員208名を投入。1陣2陣合わせて市内に積み上げられた災害廃棄物5479平方メートルを、市の指定仮置き場まで運搬した。



廃家電をダンプに積み込む全清連の支援隊。片道約1時間かけて市の指定仮置き場に運ぶ・赤沼公園にて



市民やボランティアが赤沼公園に持ち込んだ災害廃棄物。中には灯油やガスボンベ、農薬といった危険物もあり混合廃棄物状態


◆小電リ法 ‐回収増に向けた報告書(案) 回収目標14万トンを継続 抽象的な方策との見方も‐ 小型家電リサイクル制度に関する「報告書(案)」が示された。11月号で記載したとおり小電リ制度に新たな課題が表れており、現制度では対応が困難なうえ、回収量も目標の14万トンには届かない。12月10日に開かれた審議会ではこれまでの議論を踏まえた「報告書(案)」が提示され、目指すべき方向性や具体的な方策が示された。「案」では回収量増加に向けた様々な施策を記しておりその結果、回収量の目標を引き続き5年後に14万トンとするとした。ただ、委員からは施策について「誰が行うのか」といった声も聞かれ、やや抽象的との見方も。

◆新団体誕生 ‐アジアプラスチック資源循環促進協会が設立 多国間の政府や企業と協力‐ アジア地域のプラスチック資源循環を推進し、循環型社会の建設に貢献することを目的にこのほど、アジアプラスチック資源循環促進協会(APRP・本多敏行会長)が設立され、12月6日千代田区お茶の水で設立大会が開催された。中国の固形廃棄物禁輸を境にプラスチック資源循環の環境が大きく変化した。同協会ではまず、日中の関連企業、団体が中心となり他のアジア各国とのネットワークを活用し、様々な課題を目の前にして潮流の変化をビジネスに変えていくとしている。大会ではプラスチック資源循環に関する講演のあと懇親会へと続いた。

◆再生資源 ‐団古紙価格大幅な下落 回収システム崩壊の危機 問屋在庫溢れそう‐ 段古紙市況が悪化している。中国が調達を絞り込んでいるため輸出数量が大きく落ち込み価格も下落が続いている。加えて国内メーカーも購入数量をカットしており、余剰化が強まっている。中国向け輸出の段古紙は、今年1~10月の累計で前年同期比マイナス44%と減少幅が大きい。こうしたことから問屋在庫は溢れるぐらいに大きく膨らみ、購入価格も大幅に下落。末端の回収業者に影響が及び古紙リサイクルシステム崩壊の危機も懸念されている。

◆ズームイン ‐事業系一般廃棄物業界46 段古紙価格の下落が直撃 管理会社の罪は重い‐ 段ボール古紙価格の大幅下落の影響が一般廃棄物処理業者を直撃している。スーパーやコンビニなどから発生する段古紙を集めても古紙問屋の買値は5円前後。ごみと一緒に集めるから何とかなっているが、段古紙単独では利益どころか赤字になってしまう。一廃業者にとって利益に占める段古紙のウエイトは大きいが、ごみ処理管理会社が入ってきておかしくなってしまった。ごみと段古紙を分離したからだ。段古紙は高く売れるからと排出事業者に入札制度を進言し行った管理会社もあった。段古紙をごみの外に出してしまったから、一廃業者は扱わなくなった。その結果、段古紙の取扱いが大きな課題となっている。

◆視 点 ‐この業界は今後どうなる⑥ 地域循環共生圏の方向へ SDGsと極めて親和性が高い‐ 10月号で書いたが、国が指し示す「地域循環共生圏」の形成こそが、おそらくごみ処理・リサイクル業界が今後進むべき方向性なのだろう。再度言うが「地域循環共生圏」は、「第五次環境基本計画」で提唱された概念だ。この概念は2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs」と極めて親和性が高い。SDGs は持続可能な社会構築に向けて2030年までの15年間で達成するために掲げた世界共通の17の目標(ゴール)。ひとつの目標につきおよそ10の細かなターゲットが示されている。SDGsはやや抽象的と捉えられがちなので、卑近な事例としてある中小企業の取組みを何回かに分けて取り上げたい。

◆報告会 ‐3R推進団体連絡会 2018年度、8団体の実績 リデュースは一進一退‐ 容器包装の3Rを推進するガラスびん業界など8団体で構成する「3R推進団体連絡会」は12月11日、千代田区の経団連会館で記者説明会を開き、2018年度の取り組みフォローアップの報告を行った。素材別のリデュース率(削減)で前年度と比べて上昇したのはプラ容器包装だけで、他の素材は横ばいあるいは低下しており、一進一退といえるようか。

◆説明会 ‐PETボトル2018年度実績 軽量化率は23.6%と推進 ボトルtoボトル伸びる‐ PETボトルリサイクル推進協議会(PET協・佐藤澄人会長)は11月20日、千代田区霞が関ビルの東海大学校友会館で「PETボトルリサイクル年次報告書2019」の公開に伴う記者説明会を開催した。報告書は2018年度(平成30年度)の実績をまとめたもの。トピックスとしてリデュース(肉薄化・軽量化率)が着実に進展していること、リサイクル率は微減となったものの高水準を維持、また再生フレークの用途としてはボトルtoボトルの利用が伸びていることなどを上げた。

◆総会 ‐日カレ第23回定時総会 相互扶助、共存共栄を軸に 業界の団結力の強さ強調‐ ガラスびんの原料であるカレットの再生業者団体、「日本びんカレットリサイクル協会」(日カレ・金子博光会長)は11月29日、港区新橋の「新橋亭」において第23回定時総会を開催した。業界の抱える課題は様々あるが、金子会長はあいさつで、問題解決について青年部の若い力に期待するとともに、お互い共存共栄で手をとりあってやってきている。今後ともみんなで頑張っていきましょうと業界の団結力の強さを強調した。

◆イベント ‐横浜市資源リサイクル事協組 「環境絵日記展2019を開催」 20周年で卒業生のそれから‐ 横浜市資源リサイクル事業協同組合(横浜資源協組・宗村隆寛理事長)は12月8日、「SDGs未来都市・環境絵日記展2019」を横浜港大さん橋ホールで開催した。横浜市内の小学生を対象に毎年開催し今年で20回目を迎えるこの環境絵日記展、大賞のほか横浜市長賞、横浜市会議長賞など計25作品が表彰された。20周年を記念して環境絵日記を描き成長した高校生や大学生、社会人になった先輩たちによるトークイベント「未来ロード~環境絵日記卒業生のそれから~」も催された。

◆再商品化事業者 ‐5社減の合計197事業者 令和2年度の容リ協登録再生事業者 プラと紙製容器包装が微減‐日本容器包装リサイクル協会はこのほど、令和2年度の「登録再生処理事業者」を発表した。前年度に比べ合計で5事業者減り197事業社となった。ここ5年間、登録事業者数は毎年12社程度減っていたが、令和2年度は一けたの減少となった。事業者が絞られてきた感もあるが、登録事業者数の落札結果によっては、実質の事業者数はさらに減ることにも。

◆廃プラ輸出 10月輸出は7.6万t、国内主流になっていく

◆情報ファイル 環境省がワークショップ、地域循環共生圏in滋賀

◆リサイクルマーケット
鉄くず:内外相場の反発からスクラップ続伸局面
古 紙:20数年前の余剰化は中国に救われたが…
故繊維:今年の輸出量は過去最高になる可能性
容 器:中国廃プラ禁輸もPETボトルしっかり
カレット:全国的に回収量減少、茶びんの減り顕著
ニュース:2018年度温暖化ガス排出量12億4400万t ほか

11月号 主な内容

 

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