食品リサイクル

これまで様々な「リサイクル法」が施行されてきた。こうした中で平成13年に施行された「食品リサイクル法(食リ法)」は、食品廃棄物を排出している食品関連事業者に対して、平成18年度末までに20%の削減義務を課したものだ。法律は全ての排出事業者を対象にしたものだが、罰則規定がかかるのは年間排出量100トン以上の排出事業者なので、一般的にはこうした大口排出事業者が法の対象と捉えられている。

所管は農水省と環境省だが、中心は農水省であることは言うまでもない。この法律では廃棄物処理法の「特例」規定があり、堆肥施設などが「登録再生利用事業者」の認定を受ければ、そこの施設に一般廃棄物である食品廃棄物を搬入・荷卸しする場合、許可は不要としている。ただし荷積みの際には許可が必要。この特例、市町村への浸透はいまひとつ鈍いようだ。

食リ法は5年ごとの見直し規定があり、いま農水省では見直しに向けての作業が進められている。20%の削減義務をどこまで引き上げるのかが最大の焦点。また環境省は「生ごみ3R検討会」を設置、排出抑制の目標値設定などを軸に議論が展開されている。今後は農水省と環境省の合同委員会が開催され、施策の「すり合わせ」がなされていく。

また食品廃棄物を含め「稲」「わら」「建設発生木材」「製材工場残材」「家畜ふん尿」「下水汚泥」などあらゆる有機性の「バイオマス」を利活用する、「バイオマス・ニッポン」構想が進められており、バイオガス発電、燃料化など幅広い取組みが脚光を浴びつつある。

以下、食品廃棄物リサイクル施設を多少紹介。

城南島飼料化センター

06年春に竣工した「城南島飼料化センター」は、「油温減圧脱水乾燥装置」(写真右)で食品廃棄物を廃食油で揚げ、水分を蒸発させるという特殊な技術で配合飼料化原料にするのが特徴。これにより約100分で10トンを製品化でき、短時間大量処理を可能にした。油で揚げるため水溶性たんぱく質の溶出がなく、飼料の栄養価が高いという点も特徴だ。施設処理能力140トン/日、飼料製造量約30トン/日。同施設を運営する㈱アルフォは、㈱東京クリアセンターの100%出資会社。(06年12月号掲載)

バイオエナジー㈱

東京城南島に063月に誕生した「城南島食品リサイクル施設」は食品廃棄物をバイオの力でメタン発酵させ、このガスを利用して発電にむすびつけるもの。処理能力は固形110トン・液状20トン/日で、ガスエンジン発電設備500kW、同250kWと、燃料電池発電設備500 kW(写真右)を備える。この手の施設としては日本最大。受け入れは36524時間。(063月号掲載)

㈱アイル・クリーンテック

 埼玉県「彩の国資源循環工場」に建設した堆肥化施設。057月操業。持ち込まれる食品廃棄物をコンピュータで自動化し、パレットごとに管理するという全国初のシステム。醗酵室は完全密閉されているため臭気が外部に漏れない。この中で自動倉庫のようにコンテナが自在に動き、反転してミキサーに入りミキシングしたものを箱状のパレットで受ける仕組み。水分を抜くためにパレットに工夫が施されている。処理能力は108トン/日を確保。写真右は発酵室内部。密封されて入れないためガラス越しの撮影。(062月号掲載)

よりいコンポスト㈱

 この施設は主に有機性汚泥を原料とする肥料化施設。加えて食品廃棄物も受け入れている。彩の国資源循環工場に052月に完成した。汚泥の肥料化施設は関東では珍しい。おそらくここだけではないか。肥料の製造方法は原料の汚泥などを混合機に投入し、製品の戻し材を入れて調整という至ってシンプルな方法。しかし発酵熱が半端ではなく高く、この高温によって高速発酵される。特殊な発酵菌を使用しているようだ。処理能力は200トン/日。写真右は発酵槽。合計30槽ある。(054月号)

農事組合法人「百姓倶楽部」(茨城)

茨城県下妻市の農業法人組合「百姓倶楽部」は022月に食残の堆肥化施設を建設した。農家が事業を興したことに特徴がある。持ち込まれる生ごみを機械発酵させて堆肥にする方式。しかし稼動してから1年後に取材してみると、機械が十分に機能せず水分調整が上手くいかない。使える堆肥にならない。しかも悪いことに機械メーカーが経営難に陥り民事再生法を申請という状態に。110トンの処理能力で設計されたのだが……。その後どうなったかは不明。写真右は発酵タンク。十分に機能しなかったようだ。(032月号掲載)

八木バイオエコロジーセンター(京都)

京都府八木町にある「八木バイオエコロジーセンター」は、97年に施設完成。01年には増設している。近隣からの「畜産ふん尿」「おから」「期限切れ牛乳」などを受け入れメタンを発酵させ約3000kWの電力を起こす「バイオガス発電施設」。この手の施設としては取組みが早かったこともあり、注目を浴びた。ただ施設運営費と売電などによる収入を比べると収支はやや赤字。受け入れ能力は約60トン/日。写真右はガスを溜める「ガスホルダー」。(0211月号掲載)

バーク材原料の堆肥化施設「㈱辰巳屋」(福島)

福島県の辰巳屋は主に杉の樹皮(バーク)を原料に有機堆肥を製造しているが、食品廃棄物の受け入れも行なっている。堆肥の製造方法はこれ以上ないというシンプルなもの。バークを破砕して特殊な「菌」を混ぜて積んでおくだけ。同社の敷地は3万坪と広く、あちこちに堆肥化途中のバークの小山がある。切返しは重機で山を移すだけ。こうして「完熟堆肥」にするまでに2年をかける。写真右は堆肥化途中の山。半年のものや1年物など多数。(019月号掲載)

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