2020年10月号 主な内容

特集 紙リサイクルセミナーより ポスト中国はベトナムが中心 日本の古紙輸出次の時代へ
中国が2021年より固形廃棄物の輸入「全面禁止」を打ち出した。2017年に日本から中国へ輸出された古紙は244万トン。うち段ボール古紙が87万トンを占めている。これらが来年には消えることになると、ポスト中国はどうなるのか。ちょうどいいタイミングで古紙再生センターが10月15日に開催した「紙リサイクルセミナー」では、講師の山發日本㈱の藍瓊娥(らん・けいが)副社長が「中国古紙輸入禁止と市場の変化、今後の古紙・段原紙市場予測」と題して講演した。今回はこの講演内容を掲載する。
台湾製紙メーカーである正隆グループの関連企業商事部門、山發日本の藍副社長は、中国の古紙輸入禁止による中国国内の動向、東南アジアの動向、そして日本のこれからの方向性などについて約40分間にわたり講演した。内容をダイジェストすると次ようになる。
 ・古紙輸入規制を強化した中国では、古紙に代わって再生パルプ(古紙パルプ)、段ボール原紙(段原紙)、木材パルプの輸入量が増加し、古紙不足を補てんしている。また国内古紙回収量も増加している。
 ・中国国内での段原紙増産と強度化、薄物化を進めている。
 ・古紙市場は東南アジアが伸びている。インド、ベトナムの古紙輸入量は大きく飛躍した。一方、中国は減っている。
 ・日本の古紙の輸出先も変化が見える。ベトナム、マレーシア、インドネシア向けはそれぞれ4倍に。とくにベトナム向けは2020年に中国とほぼ同量になるだろう。
 ・東南アジアも規制が整い古紙の品質基準が明確化する。古紙の品質が重要。当然クリアしなければならない基準になる。AOCC(米国の段古紙)も……

◆プラ戦略 ‐プラ資源循環施策会議 方向性踏まえた主な施策議論 多数の委員から法整備が‐「プラスチック資源循環施策」の第6回合同会議が10月20日、Web形式で開催された。今回は「基本的方向性を踏まえた主な施策」を事務局(環境省・経産省)が提示し、これについて議論した。新たな点も付け加えており、徐々に形づくられてきたが範囲は広く、具体性に欠ける部分も多く課題も多い。こうした中で多数の委員から遠回しながら法整備に関する意見が聞かれた。仮に新たな法律をつくるとしたらかなり時間がかかる。速やかな検討を望むとの意見も出された。

◆不法投棄 ‐支障除去に対する支援検討会 報告書(案)示すも部分修正が 今後は3年ごとの見直しに‐「令和2年度支障除去等に対する支援に関する検討会」(座長:新美育文明治大学名誉教授)の第3回会合が10月14日、Web形式で開催された。今回はこれまでの議論をもとに検討会としての「報告書(案)」が示されたが、いくつかの箇所で書きぶりを巡って委員間での意見の相違、あるいは環境省への修文要請などがあり、そこについては座長が引き取る形で「座長あずかり」となった。また、支障除去基金の枯渇が懸念されることからこれまで5年ごとの見直しとしていた検討会は、3年ごとに見直すこととなった

◆オブジェクション‐ 家庭ごみを無人化収集 業界で働く人の職がなくなる 環境省システム開発へ‐ 読売新聞の9月27日付け朝刊トップに一廃業界にとってセンセーショナルな記事が載った。環境省が新型コロナ感染対策などから家庭から排出されるごみを、収集作業員が触らずに収集するシステムを開発、導入するというのだ。ようするにごみの収集に従事する人員を要しない「無人化収集」ということだ。このシステムが導入されれば委託業者はいらない。無人化・自動化は時の流れ――では済まされない問題を内包している。

◆時の話題 ‐一般廃棄物処理の新機軸26 賛成が勝てば新規許可増か 大阪都市構想、業界への影響‐ 「賛成が7ポイント近くリードしているようだ」「反対が3ポイントぐらい勝っている」。大阪都構想の是非を問う住民投票日の11月1日を前に「世論調査」として様々な数字がネット上に踊っている。結局、どれが正しいのか今の時点では皆目見当がつかないが、仮に都構想賛成が勝利した場合、この業界にどういう影響が及ぶのだろうか。一部からは「新規許可業者が増えるだろう」と危惧する声が聞かれる。大阪維新の会を立ち上げた橋本徹氏が大阪市長だったとき、この業界に競争原理が持ち込まれたようだ。これは維新の基本原則のようなものだから新規許可が増える、となる。11月1日は果たしてどうなるか。

◆読者からの声 PETボトルの超安値、いつまで続くのだろうか。

◆ズームイン ‐事業系一般廃棄物業界56 ウーバーイーツより安い 許可業者の処理手数料‐ 先月号では東京廃棄物事業協同組合(東廃協)が、処理手数料額改定に係る要望書を東京23区清掃リサイクル主管課長会に提出したことを書いた。行政のごみ収集と許可業者の収集とをコスト分析した場合、明らかに行政収集のコストの方が数段高い。しかし許可業者が排出事業者から受け取る処理手数料(収集運搬費+清掃工場への持込み処分費)は自治体の条例によって上限が定められている。23区の場合は1㎏40円が上限。東廃協の要望は上限価格の見直し、つまり撤廃を求めているわけだ。料理のデリバリーサービス、「ウーバーイーツ」の配達手数料より安い料金では、行政の代行としての仕事は困難だ。

◆表彰式 ‐資源循環システム表彰 環境局長賞に大成建設など 合計6件10社が受賞‐ 産業環境管理協会は10月16日、令和2年度「資源循環技術・システム表彰」ならびに受賞者による「事例発表会」を行った。今回は新型コロナ禍にあり表彰式は中止し、オンラインでの開催となった。今年度で46回目を迎えるシステム表彰は経済産業省産業技術環境局長賞に大成建設など2件4社を含め産業環境管理協会会長賞2件2社など計6件10社が受賞した。

◆記者説明会 ‐スチール缶2019年実績 リサイクル率は93.3%に 1缶8%の軽量化も達成‐ スチール缶リサイクル協会(理事長・中村真一日本製鉄代表取締役副社長)は10月6日、中央区の鉄鋼会館で記者説明会を開催し、2019年度のスチール缶リサイクル率やリデュース率の実績、同協会の事業活動などについて報告した。リサイクル率は前年度比0.1ポイント上昇して93.3%と9年連続して90%以上を維持。またリデュース率は初めて1缶あたり8%台に達し、8.11%の軽量化を実現した。説明会は新型コロナウイルス対策を十分に施した形で行われた。

◆データ ‐令和元年度多摩地域ごみ量 前年度比0.9万トンの増加 事業系ごみやや増える‐ 令和元年度の多摩地域 (30市町村・総人口約423万9000人)のごみ量は家庭ごみ・持込ごみを合わせた総量で105万7000トンとなり、前年度比9000トンの増加、率にして0.9ポイントの上昇となった。事業系ごみが6000トンの増加と家庭系に比べて増え方は多かった。

◆廃プラ輸出 コロナ小康状態か 8月輸出は前年と同量 落ち着きある国も

◆情報ファイル 全国知事会が意見提出、支援除去に対する支援/リサイクルデータブック2020

◆リサイクルマーケット
鉄 ク ズ:中国の鉄スクラップ輸入、実施の公算強い
古  紙:全面輸入禁止の余波、段古紙軟化はじまる
故 繊 維:秋の発生は増か減か尾を引くコロナの影響
容  器:東南アジアを中心にPETからアルミ缶へ
カレット:びんtoびんリサイクルYouTubeで動画配信
ニュース:ごみ出し支援モデル事業亀岡市と真庭市 ほか

9月号 主な内容

 

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